
排尿障害
排尿障害
多くの方が排尿に関する悩みを抱えていますが、恥ずかしさから泌尿器科への受診を控えている方もいらっしゃるかもしれません。適切な診断・治療により、症状の改善がみられ、生活の質の向上につながります。また、ただの排尿障害と考えていたら、膀胱癌などの重大な病気が隠れていた、ということもあります。
以下のような症状があれば、早めの受診をお勧めします。
前立腺とは、膀胱に隣接し尿道を取り囲んでいる男性特有の臓器です。前立腺が肥大し尿道を圧迫することで、様々な排尿に関わる症状が現れます。正常な前立腺のサイズは、成人男性で20ml以下(クルミぐらいの大きさ)ですが、肥大すると卵ぐらいの大きさになることもあります。
症状としては、頻尿、夜間頻尿、排尿困難、残尿感などがあり、進行すると尿閉となってしまいます。尿閉になると自分では尿が出せないため、尿道にカテーテルを留置して排尿を助ける必要があります。そうなる前に早期の診断、治療開始が推奨されます。
診察・検査として、問診(IPSSスコア)や超音波検査、残尿測定、尿流量測定などを行い、診断や重症度の判定を行います。
治療として、まずは薬物療法を行いますが、効果が不十分の場合は手術療法が必要となる場合があります。
過活動膀胱とは、尿意切迫感を必須の症状として、通常は頻尿と夜間頻尿を伴う症状症候群と定義されます。尿失禁は伴う場合と伴わない場合があります。同様の症状を呈する疾患として膀胱炎や膀胱癌、骨盤臓器脱などがあり、これらを除外する必要があります。そのため、一度は専門医の診察が推奨されます。
診断のために、問診(過活動膀胱症状スコア)や尿検査、残尿測定を行います。
治療としては、生活指導(減量、過度のカフェインやアルコール摂取の制限、膀胱訓練など)や薬物治療を行います。
神経因性膀胱とは、神経の異常が原因で起こる膀胱機能の障害のことです。
原因としては、脳梗塞や脳腫瘍、頭部外傷などによる中枢神経疾患によるものをはじめ、パーキンソン病、多発性硬化症などの神経変性疾患、事故などによる外傷性脊髄損傷や腰椎椎間板ヘルニア、糖尿病性神経障害、子宮癌・直腸癌などに対する骨盤内手術後の末梢神経損傷など、多岐にわたります。
特に排尿筋収縮力が低下すると(低活動膀胱)、正常に尿が出せなくなり尿閉となってしまう可能性があります。その場合は尿道カテーテルの留置や間欠的自己導尿(自分で尿道に細い管を挿入して尿を出す)が必要になります。排尿困難や残尿感といった症状だけでなく、頻尿や尿失禁として自覚する場合もあります。
診察・検査として、問診(既往歴などの確認)や尿検査、残尿測定などを行います。
治療としては薬物治療を行いますが、残尿が多い場合は間欠的自己導尿が必要です。
尿失禁は40歳以上で4割の方が経験しているといわれており、悩んでいる女性も少なくありません。恥ずかしがらずに、まずはご相談ください。
尿失禁は、「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「溢流性尿失禁」「機能性尿失禁」に分類されます。
腹圧性尿失禁は女性の尿失禁の中で最も多く、咳やくしゃみ、笑ったときや重い荷物を持ったときなど、お腹に圧力がかかったときに尿が漏れてしまう症状です。骨盤底の筋肉の緩みが原因で、妊娠や出産、加齢などを契機に発症します。
切迫性尿失禁は、急に迫感のある尿意に襲われ、我慢できずに漏れてしまうという症状です。頻回にトイレに駆け込む事態が生じ、外出や乗り物の移動中に困ることがあります。
溢流性尿失禁は、尿を排出したいのに出せず、少しずつ漏れてしまうもので、機能性尿失禁は認知症や運動機能の低下が原因で起こる失禁です。
尿失禁は、分類によって薬剤選択や対策などが異なります。腹圧性尿失禁であれば、行動療法(骨盤底筋体操、ダイエットなど)が有効になり、症状が重い場合は手術を検討します。切迫性尿失禁については、過活動膀胱に対する薬物治療が有効です。
夜間、排尿のために一度でも起きてしまうことを夜間頻尿といいます。排尿の症状の中でも、夜間頻尿が一番困るという方も少なくありません。夜間頻尿となる原因は、前立腺肥大症や過活動膀胱、睡眠障害など多岐にわたりますが、そのうちの一つに夜間多尿があります。
夜間多尿は、夜間のみ尿量が多くなる状態のことで、65歳以上の方では夜間多尿指数(夜間尿量/1日尿量)が33% を超えるものと定義されます。原因は眠前の水分過剰摂取、下腿浮腫、高血圧や心不全、腎機能障害などの内科の病気によるものなどがあります。
夜間多尿の診断には排尿日誌を利用します。排尿日誌により、昼間と夜間の排尿回数、1回排尿量、1日尿量、夜間尿量などの情報を正確に知ることができます。
治療としては、行動療法(眠前からの水分制限、就寝前のアルコール摂取量の減量など)をまず行い、薬物治療を検討します。